研究目的
​(1)基本目的

 投票行動研究は、民主主義の要となる選挙の機能を明らかにするという現実的なレリヴァンスをもつとともに、政治学や社会学など諸分野からのアプローチにより進められるという点で、社会科学上の重要な結節点でもある。
 本研究は、1983年のJES調査以来続けられている投票行動の全国的・時系列的調査研究の基盤を明確に継承しつつ、今日的要請に応えるべく新しい視点を加え、JESⅥ(Japanese Electoral Studies Ⅵ)としての全国時系列調査を実施し、政権交代期における民主主義を体系的に解明することを基本目的とする。

(2)研究課題の目的・独創性・意義

 本研究課題は、投票行動の全国的・時系列的調査研究を基礎としつつも、1960年代からの過去の研究資産を生かし、政治学の新しい視点から再構築し、従来の投票行動研究を発展させること、また、日本における主要な政治意識調査として、現在強く要請されている社会科学における学術データベースの構築と国内外への公開、それを通じての国際比較研究の推進、研究成果の発信にも貢献することを目的とする。具体的には、下記の点である。

  1. 選挙研究から民主主義研究への進化:投票行動や選挙結果を被説明変数ではなく説明変数としても扱い、民主主義を解明する。

  2. 多角的データの融合による政治研究の飛躍的発展:選挙結果・選挙公約・議会議事録・予算配分など政治過程の諸データと接合し、調査データの有用性を拡大する。

  3. マルチメソッドによる分析:従来の面接調査による結果と郵送調査・インターネット調査・電話調査による結果を比較することで、新しい意識調査の方法論を構築するための挑戦的な研究を推進する。

  4. 政治意識の形成と変容の解明:40年以上継続する投票行動の全国的・時系列的調査研究の基盤を継承し大規模な全国パネルデータを収集・整備する。

  5. 知的資産の社会的還元及び国際的発信:調査データ公開により、海外の選挙研究・日本政治研究の発展に貢献する。


 このことを通して、民主主義の解明を目指す多角的研究を進めるとともに、国内外の学術及び社会に知的資産を還元することが、本研究課題の独創性と意義である。

(3)何をどこまで明らかにするのか

 本研究課題では、日本における多数決型代議制民主主義の機能について検証する。具体的には、(1)「競合する政策エリートが提示する公約に基づいて市民が政策エリートを選択している(イシューヴォーティング)かどうか」(代議制民主主義の事前的側面)、(2)「選出された政策エリートが公約に基づいて国会で議論して政策形成を行っている(選挙公約と国会活動の一致)かどうか」(代議制民主主義の代議的側面)、(3)「市民が選択した政策エリートが形成する政策に対する評価に基づいて、次の政策エリートを選択している(レトロスペクティブヴォーティング)かどうか」(代議制民主主義の事後的側面)について分析を進め、「市民が政策エリートに民意を付託し、選出された政治家が国会で議論した結果として形成される政策に対する市民の評価が、次の政治家選出につながる」という代議制民主主義が、日本においてどのように機能しているかを明らかにする。  分析にあたっては次のテーマを設定した。

  1. 選挙公報の認知と投票行動の関係:代議制民主主義の事前的側面を主観的調査データだけでなく、客観的内容分析データを用いて検証する。

  2. 批判的投票者の形成要因と変容要因:政党や政治家に対しては批判的であっても民主主義そのものは高く評価する「批判的投票者」の形成要因及び変容要因を意識調査により解明する。

  3. 選挙公報と議会行動の関係:代議制民主主義の代議的側面を検証する。民主主義の指標化について、従来の外形的変数によらず、選挙公報と国会議事録の内容分析を用いた「機能」に着目した新しい指標を構築する。

  4. 政策パフォーマンスと次回投票行動の関係:代議制民主主義の事後的側面を主観的な調査データだけでなく、客観的内容分析データを用いて検証する。

  5. 政党広告と投票行動の関係:代議制民主主義の環境が投票行動に及ぼす効果を解明するために、サンプルを検証群と統制群に分けて比較して検証する。

  6. 選挙運動の動員効果:代議制民主主義の環境(動員活動)が投票行動に及ぼす効果を解明することにより、如何なる動員が効果を持つのかを解明する。


 これらの分析を通じて、日本における多数決型代議制民主主義の機能を解明するとともに、Westminster Democracy Model 、Pippa Norris の Critical Voter Model 、Charles Tilly の Mobilization Theory など民主主義の理論的仮説やモデルのテストも進め、理論的な貢献も果たしていくことにしたい。

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