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研究目的
​(1)基本目的

 政治意識研究は、民主主義の要となる選挙の機能を明らかにする現実的なレリヴァンスをもつために日本で多くの研究が蓄積され、全国規模の調査データは世界に誇れる数少ない公開データの一つとなっている。中でも、本研究の代表者・研究分担者が参加した一連のJES研究(JESⅡ-JSⅥ)による全国パネル調査の成果は、日本における投票行動研究の基盤となっており、各研究期間終了後1年以内に大学院生を含むのべ700名の国内外の研究者に調査データを無償で公開してきた。本研究は、こうした一連のJES研究を明確に継承してJESⅦ(Japanese Electoral Studies Ⅶ)として全国パネル調査を実施し、調査データを継続して公開するとともに、政治意識データを選挙公約や議事録などのデータと融合して、従来の選挙研究から代議制民主主義研究へのパラダイムシフトすることを目指すものである。

(2)本研究の意義

 「どのような民主主義が望ましいのか」は、政治学にとって永遠の研究課題である。従来、与党と野党の得票率や議席率の比による「異議申し立て・競争」、そして投票率や一票当価値性による「包括性・参加」を測定する研究がある。しかし、それらはいずれも外形的な指標であり、与党の得票率や議席率が高くても、有権者が望む政治を行った結果なのか、政府による選挙干渉の結果なのかを区別することが困難である。つまり、外形的な指標は、一党独裁を排除することはできても、多くの有権者が支持する一党優位政権までも排除することになる。また、同じ与野党比率でも民意を反映する政党同士による国会における比率と反映しない政党同士による国会における比率を同じにみて良いのかという疑問が残る。そこで、①本研究では従来の外形的な指標に替えて「民主主義の機能」に着目して前頁の分析を行うことで、すでに民主主義が定着している国における民主主義の「質」を明らかにする点に独自性と創造性がある。②また、本研究における政治意識データと選挙公約データ、議会議事録データを融合させることにより、従来の選挙研究を代議制民主主義研究にパラダイムシフトさせる。③さらに本研究は日本における投票行動の全国的・時系列的調査研究(JESシリーズ)を明確に継承し、引き続き本研究グループのサイトを通して、国際的にも評価の高い日本の政治意識データを国内外の研究者(含、大学院生)に対して研究期間終了後1年以内に無償で公開する。これにより、本研究は日本における選挙研究に新しいスタンダードを形成するという大きな意義を有するのみならず、日本の選挙研究に対する国際的評価を一層、高めるとともに、海外の日本政治研究に対して、その基盤形成に貢献する。

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